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「大飯原発差し止め判決」について [社会]

福井地裁「大飯原発差し止め判決(5月21日)」については、
朝日テレビの『報道ステーション』(たまたま見たのだが)がとてもわかりやすくインパクトがあった。新聞を読んだり、ましてや長い判決文を読む余裕がない人にとっては、やはりテレビ報道は大事な情報源になる。(大抵は弊害の方が大きいと思うれど・・)


以下、報道ステーションの内容。

大飯原発の3,4号機は、東日本大震災後、唯一再活動した原発で、現在は点検のため休止中。189人の住民が「耐震安全が保障されていない。運転を見合わせるよう求める」と裁判を起こした。
福井地裁は、原告の(250km圏内の住民166人について)「原発運転差し止め要求」を認めた。これは東日本大震災後初の「原発運転差し止め判決」だった。

判決

(主文)

<被告(関西電力)は、大飯発電所3号機及び4号機の原子炉を運転してはならない。>

(理由)

<生存を基礎とする人格権がすべての法分野において、最高の価値を持つとされている以上、人格権は憲法上の権利であり、我が国の法制下でこれを越える価値を他に見いだすことはできない。
人格権そのものに基づいて 具体的危険性が万が一でもあれば その差し止めが認められるのは当然である。>


(裁判所の判断について)

<福島原発事故の後においてこの判断を避けることは、裁判所に課された最も重要な責務を放棄するに等しいものと考えられる。>

<原子力規制委員会の新規制基準の適合性という観点からではなく、原子力発電所に求められるべき安全性に基づく裁判所の判断が及ぼされることになる。>

そして、 原告住民らが訴えた『耐震安全性が保障されていない』という訴えについて、大飯原発は " 原子炉を冷やす機能・閉じこめる構造 " に欠陥がある」と指摘した。
関西電力が新たに想定した地震の揺れは856ガル(ガル:揺れの加速度を示す単位)だが、裁判所は「その数値は信頼に値しない」とした。


<全国20カ所にも満たない原発のうち、4つの原発に5回にわたり、想定を越える地震が10年足らずの間に到来している。地震という自然の前における人間の能力の限界を示すものというしかない。関西電力の地震想定だけが信頼に値するという根拠は見いだせない。>


また「関電の想定」を下回る地震が起きたとしても、福島の事故と同様の " 不測の事態 " が想定される、と指摘している。

不測の事態として
*地震による段差で電源車が動かせず
*非常用水路の発電機が稼働できず
*電源・冷却水の喪失

など、事例は多岐に及ぶ 。


(作業員について)

<事態が深刻であれば深刻であるほど、混乱と焦燥の中で 適切かつ迅速に措置をとることを 原子力発電所の従業員に求めることはできない。>

(福島原発の事故原因について)  

<国会事故調査委員会は 津波の到来の前に 外部電源の他にも地震によって事故と直結する損傷が生じていた疑いがある旨指摘しているものの 地震がいかなる箇所に どのような損傷をもたらしたかの確定については至っていない。また その原因を将来確定できるという保証はない。>

(関西電力が主張した『経済性』について)

<大飯原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流失や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことが出来なくなることが 国富の喪失であると裁判所は考えている。>

福井地方裁判所民事第2部

 裁判長裁判官 樋口英明

    裁判官 石田明彦

    裁判官 三宅由子



久しぶりにきちんとした日本語を聞いた気がした。
正しいことを述べた言葉というのは、美しいし感動するものだ。
いつものごとく、翌日にはもう別のニュースが流れてたが、福井地裁のこの判決はしっかり記憶にとどめておかなければ、と思う。
それにひきかえ、「国民の生活・安全を守る」を大きく唱えて、武力抗争の怖れのある方向へ国民を導こうとしている政府の詭弁・矛盾は、あまりにもひどすぎる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一応、判決に対して責任ある立場にある人たちのコメントを記しておきます。

中塚町長;
現時点で新規制基準にもとづく審査が規制委員会のほうでなされているので、そこをまたしっかりと注視する

田中俊一委員長(原子力規制委員会 );
我々は我々の考え方での適合性審査をしていくことになろうかと思います。


管 義偉 官房長官;(今日の判決を受けて政府の判断は変わるのかという問いに)
そこは全くかわりません。あくまでも安全を客観的に(規制委員会に)判断してもらったうえで再稼働する。そういうことは私は正しいと思っています。


山本 拓 会長(自民党エネルギー戦略調査会);
もう一度裁判所で上級審で審判を仰ぐべきだと思っています。

関西電力;
すみやかに控訴の手続きを行い ひき続き大飯原発3,4号機の安全性について主張していきたい。


どなたも、裁判の判決など意にも介さないという態度でした。

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コメント 4

shira

 せっかくの司法判断もすごく軽く扱われている感じがします。
 最近思うのですけど、権力を持つ人間にとって最も強力な武器はメディアでも懲戒でもなく人事権なんじゃないかと。司法にしても、その人事権は行政府が持っているわけで、これじゃ司法の独立なんて無理ですよ。
by shira (2014-05-31 23:26) 

tamara

本当にそうですね。
子供の頃、三権分立を授業で初めて勉強したとき「なるほど、司法は三角形の一つの頂点でこれがないとぺしゃんこなんだな〜」と感心したことを覚えています。人事権を行政府がにぎっていてはどうにもならないのですね。庶民ができることは、良識ある判断に対しては声を大にして賛成の意を示すことだと思いますが、ちっぽけな声しか出ないのが悲しいです。
by tamara (2014-06-01 13:00) 

ayu15

電気が足りないという心配はもっともだと思うのですが、この判決見てもなんか・・・。

京都北部・滋賀北部は30キロ圏内なのに立地自治体でないという理由で協定結べません。
避難計画もあやしそう・・。
27号線しかないのです。

特に舞鶴は目と鼻の先なのに・・・。

事故起きないように万全の体制維持し続けてくれるの??
万が一の時充分な補償してくれるの?

福島の例みてると不安はどんどん高くなります。
by ayu15 (2014-08-02 08:38) 

tamara

私たちは電力会社や政府が言うことを「そうですか」と聞くしかないわけで、「電力不足」というのも自分で確かめるわけにはいきません。これまでの事を考えると「電力不足」も疑わしい、という気がしています。国民の安全を守れなくても「想定外だった」という言い訳で通過していくのでしょう。許せないですよ。
by tamara (2014-08-04 21:16) 

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