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普天間基地問題〜「抑止力」とは?〜 [社会]

先日、NHKの「日本のこれから」という番組で『日米安保』についてやっていた。見たくはなかったけれど、基地が必要という人が何を言うのか知りたかったので見た。番組は毎度のことながら、設問の仕方がおかしいことが多く(これには出演者も憤慨していた)、基地はメリットが多いかデメリットが多いか、というような単純な問い方をする。
中国や朝鮮の「脅威」が、当然のことのように報道されている今、一般には「抑止力」として「基地はないよりあった方が安心」と考える人が多くなる。
「ないよりあった方が・・」という考えは、実際あらゆる場面で使われている。「少ないより多い方が」も同じように使われる。人間というのはつくづく欲張りな動物だ。もともと人間も本質的には狩猟時代には、必要な分だけ、自然に感謝しながら獲物を捕っていたのではないか。今はとんでもなく貪欲になってきてしまった。

貪欲が普通になっているから、「なくてもよい」「ない方がよい」ということを言うためには、100万語も必要になってくる。「日本のこれから」の出演者で、基地の必要性を声高に言っていた人は、この「ないよりあった方が」という思考にしっかりとらわれている感じだった。
私には「何をどう抑止するのか」いまだによくわからない。沖縄米軍基地が本当に「何か」の「抑止力」になるかどうか、よほどの軍事専門家でもないかぎりわかるわけがない。(いや、軍事専門家だって本当は予測なんかつかないだろう。)それなのに、「ないよりはあった方がまし」という考えが染みついているからそれ以上考えが深まらない。「もう基地と隣り合わせの生活はごめんだ。撤退して欲しい」という人と、どうやっても話がかみあわないのだ。

目の前に自分を殺そうとしている人間がいるときに黙って殺されるのか、という幼稚なすりかえ論理が相変わらず持ち出されていた。(私だって目の前にそんな人間がいたら必死で戦う。ま、力はないからすぐに負けるだろうけど。)
この論理でいくと、ぶっそうな世の中、やられないためには個人もまた武装したほうがよいということになってしまう。各自、銃を持つ? 核もあったほうが良い?
実際には、様々な悲惨な事件が報道されても、神経質になりすぎず、穏やかに生活しようとしている人がほとんどだ。いつもいつも、いつ起きるかわからない悲劇を恐れては暮らしていけないからだ。危険を避けるためには家の中に(そう言えば『核シェルター』という言葉も流行ったっけ)じっと閉じこもっているしかない。家の中でも100%安全ではないが、外よりはまし、ということになる。

こんなばかげた考え方や行動は誰もしないが、なぜか、「日米安保」という考えには賛成してしまう人が多い。「米軍基地」も「ないよりあった方がいい」と考えられている。基地が必要だと思う人は、自分が住む地域に必要だと思っているのだろうか。きっとそうではないだろう。基地は必要だが、危ないかし迷惑だから自分の住む地域にはないほうがいい、などと思っているとしたらあまりに身勝手だ。

結局、自分の問題になっていない。自分の問題にできない人間が、米軍基地が必要かどうかという問題に、意見を述べていいものだろうか。自分のところには絶対に来ない、基地は他所のこと、と思っている人間が意見など言っていいのだろうか。

さて、今日(4月1日)の毎日新聞(3面)では、「測り難い『抑止力』」という見出しで、抑止力を計量的に測るのは難しい、という取り上げ方をしていた。

記事には1月15、16日の第16回日米安保セミナーの様子が書かれていた。
「海兵隊は沖縄になぜ必要か」との問いを発したのはむしろベテラン政治ジャーナリスト、クリス・ネルソン氏ら米側だった、とある。

<95年9月に起きた沖縄駐留米海兵隊員3人による少女暴行事件をきっかけに、日米両国は議論を重ね、海兵隊が持つ普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の返還で合意した。日本ではあまり知られていないが、米国内では沖縄の海兵隊の撤退論や海外移転論の研究が盛んになった。>

日本では米国の海兵隊撤退論、海外移転論などがあまり知られていないどころか、日米合意を引き延ばしたり、変えたりしたらアメリカが怒って関係悪化になる、という報道ばかりされている。自民党の谷垣氏は、相変わらず、基地移転問題をどう解決するかということについては全く意見を述べず、ひたすら「5月末までに決着できなかったら日米間の信頼を決定的に損なう。その時は首相は退陣をしなければならない」と言っている。どうして信頼を決定的に損なうと、決めつけられるのかまったく理解不能。

毎日新聞の1面には名護市嘉陽のサンゴ礁の海をゆうゆうとおよぐジュゴンの写真も載っていた。移設案の一つにホワイトビーチ沖への移転というのも出ているが、ホワイトビーチ沖への移転の場合、辺野古沿岸の6倍以上規模の海埋め立てだというから、まったくふざけた話だ。
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shira

 私が防衛力とか必要最低限の軍事力という言葉にはっきり疑問を持ったのは『暮しの手帖』の記事にあった「相手側に対してどれだけの力なら最低限なのか、半分か、同等か、倍か」という文面です。もし自国の国民と領土を完璧に防衛するのが目的なら、必要最低限の軍事力=圧倒的な軍事力=ミサイルの一発すら打ち込ませない軍事力、のはずです。
 もう一つは、これは出所は忘れましたが「軍事力は使わずに済むのが最高」という概念です。つまりベストの軍事力とは、見せびらかしor脅しの効くものであって、武力行使する前に「参りました」と言ってもらえるのが一番ラクなわけです。ただしそのためには、圧倒的な物量とか、圧倒的な技術力が必要です。しかもまずいことに、そういうものが案外と役に立たないということがベトナム戦争とアフガン戦争〜イラク戦争で立証されてしまった(軍事的な優勢は必ずしも外交の成功を約束しない)。

 言いたいことはまだまだあるんですが、もう一つだけ言うと、どーしてウヨの人ってああも怖がりなんでしょうか?アメリカが怖くて、中国が怖くて、韓国も北朝鮮も怖くて。政権交代もひどく怖がってましたっけ。自信ないのかな?
by shira (2010-04-02 00:51) 

solea01

圧倒的な軍事力を保持するのは、もはや米国だけでしょうね。核兵器は確かに相手に致命的な打撃を与えることが可能だが、その管理保持には大変な手間や金額もかかる。軍事の維持には常に背後に経済問題がありますね。米国が日本の防衛のために安保を維持しているわけではないことがわからない、というよりわからないふりをしていることが大問題なのだと思います。
by solea01 (2010-04-02 19:45) 

tamara

>shiraさん、おっしゃるように「抑止力」とはどの位の力を言うのかまったく不明です。今ある沖縄米軍基地の規模というものがどういう根拠に基づいているのか、そもそも根拠というものがあるのか、大きな疑問です。軍事費についても同じですね。(大体、いつから『日本の軍事費』などという言葉が日の目を見るようになったのでしょう。) 怖がり屋が攻撃的傾向を持つというのは、確かにそうかもしれませんね。怖がり屋は人への迷惑まで考える余裕がないのだと思います。

>solea01さん、米国が日本を守ってくれる、と思っている人が多いようですが、実際どういう場合にどんなことをしてくれるのかまで具体的に考えているのではないと思います。なんとなく「抑止力」という言葉に安心するのでしょうね。米国が日本を守ってくれるという幻想を作っているのは、政治家とマスコミです。
守ってもらうだけでなく自衛を強化する必要がある、と考える人も増えているような・・。『脅威』の宣伝が行き渡っています。
by tamara (2010-04-02 21:08) 

ayu15

基地は要らないという人は悩まなくていい?でしょうけど、安保基軸で基地重要と考える人は基地をどこにするのか考えないと・・・。
どこかが引き受けなきゃいけないもの。基地要るという人は押し付け合いはしないんでしょうねえ??
by ayu15 (2010-04-22 20:10) 

tamara

基地が必要と言う人が基地の押し付け合いをするというのは、常識的に考えればあり得ないことですね〜。
by tamara (2010-04-23 21:16) 

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