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「花子とアン」にえがかれる戦争 [雑感]

第二次大戦の時代を背景にしたドラマは多いが、「純情きらり」は音楽家、画家への弾圧がえがかれていていい作品だと思った。
「花子とアン」も、やはり戦争が時代背景となっている。
いつも見ているわけではないが、135話、136話は、戦争に対して人々がどのような感情を持ち、どういう立場をとり、どう行動するかが、わかりやすく(誠実に)えがかれていた。
ドラマのセリフを拾い出すと、

<なぜ危険なことをするのか(反戦争という思想)、という花子の問いに、れんこが答える。>

れんこ
「(龍一さんは)間違ったことはしていない。誰よりも子ども達の将来を考えている。
だから今の国策にがまんができないの。

<花子はラジオの子供の新聞という番組の語り手をしているが、子供たちに楽しいお話を聞かせたいという思いはかなわず、戦争のニュースばかり伝えてことに悩んでいる。>

はなこ(ラジオで)
「みなさんは戦地の兵隊さんが安心して戦え、誉れの凱旋ができるよう、おうちのお手伝いをしてしっかりお勉強いたしましょう。」

れんこ
「まるで、みんながんばって強い兵隊になれと言っているように聞こえたわ。」
ーーー(あれは、といいかける花子)

「花子さんも誰かに読まされているんでしょう。
そうやって、戦争をしたくてたまらない人たちは国民を扇動しているのよ。
あなたは本当はどう思っているの。ラジオのマイクの前で、
日本軍がどこを攻撃したとか、占領したとか、そんなニュースばかり読んで、ああいうニュースを毎日毎日聞かされたら、純粋な子ども達はたちまち感化されてしまうわ。
お国のために命をささげるのは立派だと思ってしまう。」

はなこ
「私だって戦争のニュースばかり伝えたくない。
でも、こういうときだからこそ、子ども達の心を明るくしたいの。
私の『ごきげんよう』を待ってくれる子ども達がいるかぎり、私は語り手を続けるわ。」

れんこ
「そんなのは偽善よ。
やさしい言葉で語りかけて子ども達を怖ろしいところに導いているかもしれないのよ。」

はなこ
「私一人抵抗したところで世の中の流れを止めることなんかできないわ。大きな波がせまってきている。その波にのみこまれるかのりこえられるか、誰にもわからない。
私たちの想像を超えたはるかに大きな波なんですもの。私もすごく怖ろしい。
でもその波にさからったら今の暮らしも何もかも失ってしまう。大切な家族すら守れなくなるのよ。」

れんこ
「私は時代の波に平服したりしない。世の中がどこへ向かおうと言いたいことを言い、書きたいことを書くわ。」

「あなたのようにひきょうな生き方をしたくないの。」

はなこ
「私たち生きる道がちがってしまったわね。」


<この段階では、二人とも戦争に反対の気持ちを持ちながらも、その立場は微妙にずれ分かれることになる。その後、はなこはラジオの語り手を辞めるのだが>

一方で、戦争を賛美する声として

宇田川

「私はペン部隊の一員として、わが皇軍将兵の勇戦敢闘ぶりを、この目でしかと見てまいりました。
私は心の中で叫びました。『遠き故国日本の母よ、姉よ、かくまた恋人よ。あなたがたのいつくしんだ人たちは、今破竹の勢いで猛進撃を続けております。これをあなたがたがごらんになれば、きっと涙にむせびつつ、同時に誇らしく思われることでありましょう。』」


こういう意見の食い違いというのは、昔も今も、人間の間の超えられない溝のようなものを形づくっているような気がする。
花子、れんこ、宇田川に見られる三者三様の考え方は当時を代表するものだったのだろうと思うが、今でもさまざまな場面で見られるように思える。

そして「現代」の特徴を現すのは、このような考え方のさらにその上に「あらゆることにおいて目先の経済発展こそがなによりも優先」という考えが君臨していることだと思う。
それが今もっとも幅をきかせている考え、行動、であるならば、それに対抗するのは非常に難しい事だという気がしている。


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コメント 7

jmh

小生も「はなこ」さんと「れんこ」さんのやりとりを、TVの画面を見ずにきいていました。「おっ、これは何の番組だろう」と思って耳をそばだてたのです。
想像ですが、新しい内閣の人たちに中には、このやりとりを苦々しく聞いた人もいたのではないかと思います。
誰もが「いろいろな考え」を表明できる、この当たり前のことがだんだん心配になってきているこの頃です。
by jmh (2014-09-07 17:57) 

tamara

昨今のNHKに関する話題を考えると・・真実にせまるようなセリフが出てきたのにちょっとびっくり。
もっとも、人は、それぞれが「いろいろな考え」を持っているわけだから、自分に合う考えに気持ちをすり寄せ、自分なりの解釈をしながら見るのだろうな、と思います。このセリフに気を留めた人はどのくらいいるのか・・やはり考え方の溝は大きいのでしょうね。
by tamara (2014-09-07 22:19) 

Ladybird

 今のNHKにしては上出来の取り上げ方だと思います.「戦時中」をどう描くのか,今後の方向性に注目しています.
by Ladybird (2014-09-15 00:56) 

tamara

腐った水の中にもきれいなものがある、ということでしょうか。それがなくなってしまったら本当に終わりですね。
なんとかNHKの良識派はがんばってほしいものだと思います。
by tamara (2014-09-18 21:20) 

Ladybird

 アイヒマンは普通の凡庸な男だった.ただ自分の出世に熱心だった.与えられた仕事を熱心に遂行するだけ. 周囲を見回したら,今の日本はアイヒマンばかりです.

 「凡庸であること」の悪. あなたも私もアイヒマン.
http://blog.livedoor.jp/kaneko_masaru/archives/1795336.html
by Ladybird (2014-10-09 09:54) 

tamara

ladybirdさん、記事の紹介ありがとうございます。

不気味な世の流れの中にいることを日々感じています。
じわじわと進む変化によって、10年先、20年先の社会がどうなっていくのかを考える人などごく少数なのでしょう。
悲観的予測など信じたくない、聞きたくもない、という人が多いのだと思います。
なぜそんな風でいられるのかはよくわかりませんが。
享楽的な生活に真底毒されてしまっているからかもしれません。
by tamara (2014-10-10 23:41) 

ayu15

それは観ていないです。なんか考えさせられるみたいですね。
うちは日記に
「空の防人」 「天使の赤紙」 「黙っていかせて」など取り上げています。


 戦争画というがあります。古くは元寇の時の武将の奮闘を描いたものとかが有名です。

第二次大戦も多分あったかも。

画家は強制されたひとばかりじゃないらしいです。
積極的に行った人もいるらしいです。

うちが取り上げた作品などでしか当時の空気はわかりません。
そこから推測したら、積極的に行った画家の人たちを戦争協力と強く批判はしにくいです。

なんとなくみえるのは空気読んで全体主義的になる空気の怖さです。
by ayu15 (2014-10-22 09:31) 

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